【世界一わかりやすい】地震の「震度」はどう決まる?マグニチュードとの違いから計測震度の仕組みまで徹底解説!

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地震大国である日本に住む私たちにとって、「震度」という言葉は日常的に耳にする、最も重要な防災情報の一つです。テレビやスマホから「震度5強の地震が発生しました」という速報が流れるたびに、私たちは身構え、行動を決定します。

しかし、この「震度」が、一体どのようにして、誰によって、そして何によって決められているのか、正確に知っている人は意外と少ないのではないでしょうか?

今回は、世界一わかりやすく、地震の「震度」の決まり方を徹底的に解説します。単なる揺れの強さの指標ではない、その裏側にある科学と技術の粋を一緒に見ていきましょう。この記事を読めば、次に地震速報を聞いたとき、その情報が持つ意味をより深く理解できるようになるはずです。


1. 震度とマグニチュード:決定的な違いを理解する

まず、多くの人が混同しがちな「震度」と「マグニチュード(M)」の違いを明確にしておきましょう。

マグニチュード(M):地震のエネルギー規模

マグニチュードは、地震そのものの大きさ、つまり地震が放出したエネルギーの規模を示す指標です [1]。

これは、震源地(地下で岩盤が破壊された場所)から放出されたエネルギーの総量を示すため、一つの地震に対して値は一つしかありません。例えるなら、電球の「ワット数」のようなものです。ワット数が大きければ、その電球が持つ光のエネルギーは大きい、ということになります。

震度:ある場所の揺れの強さ

一方、震度は、ある特定の場所における地震の揺れの強さの程度を示す指標です [2]。

マグニチュードが同じ地震であっても、震源からの距離が近ければ震度は大きく、遠ければ小さくなります。また、同じ距離であっても、その場所の地盤の固さや地形によって揺れの増幅のされ方が異なるため、震度は場所によって細かく変わります。例えるなら、電球の光が「届いた場所での明るさ」です。同じワット数の電球でも、近くで測れば明るく、遠くで測れば暗くなるのと同じ原理です。

指標意味するもの観測値の数測定方法
マグニチュード (M)地震が放出したエネルギーの規模地震一つにつき一つ地震計の記録から計算
震度ある場所の揺れの強さの程度観測地点の数だけ多数震度計の記録から計算

2. 震度の歴史:体感から計測へ

かつて、震度は人の体感によって決められていました。気象庁の職員などが「この揺れは震度〇だ」と判断していたのです。しかし、これでは観測者の主観や体調に左右され、客観性や即時性に欠けるという問題がありました。

この問題を解決し、より正確で迅速な情報提供を実現するために、1996年(平成8年)4月1日から、震度の観測は震度計による自動計測に全面的に移行しました [3]。

現代の震度を決める「計測震度」の仕組み

現在、私たちが知る震度(震度0から震度7までの10段階)は、震度計が観測したデータから計算される計測震度という値に基づいて決定されています。

計測震度計は、地面の揺れ(地震動)の加速度を測定します。しかし、単に最大の加速度(ガル)を測るだけでは、人間の感じる揺れの強さとは一致しません。なぜなら、人間は短い周期の小刻みな揺れよりも、長い周期のゆっくりとした大きな揺れ(特に建物を揺らす揺れ)を強く感じるからです。

そこで、気象庁は、人間の体感と最もよく対応するように、加速度の記録(波形)に特別な処理を施して「計測震度」を算出しています [4]。

計測震度算出の3ステップ

計測震度は、震度計が記録した上下・東西・南北の3方向の加速度波形データから、以下の手順で計算されます。

  1. 体感に合わせたフィルタリング処理
    • まず、加速度波形データから、人間の感覚が鈍いとされる非常に短い周期(高周波)や非常に長い周期(長周期)の揺れの成分をカットするフィルタリング処理を行います。これにより、建物に被害を与えたり、人間が強く感じたりする周期帯の揺れだけを抽出します。
  2. 揺れのエネルギーの計算
    • フィルタリングされた加速度波形を積分し、速度波形を合成します。この速度波形を基に、揺れのエネルギーに相当する値を計算します。
  3. 計測震度の算出
    • 計算された揺れのエネルギーを示す値から、以下の式を用いて計測震度 $I$ を算出します。
      $$
      I = 2 \log_{10} (A) + 0.94
      $$
      ここで、$A$ は、揺れのエネルギーを示す値(厳密には、特定の処理を施した加速度の絶対値の最大値)です [4]。

この計測震度 $I$ は、小数点第1位まで(例:4.8、5.1、6.3)の連続的な値として求められます。


3. 10段階の「気象庁震度階級」への変換

計測震度 $I$ が算出された後、最終的に私たちがニュースで聞く「気象庁震度階級」(震度0から震度7までの10段階)に変換されます。

この変換は、計測震度の値に応じて、以下の表のように機械的に行われます [5]。

気象庁震度階級計測震度 $I$ の範囲
震度7$6.5$ 以上
震度6強$6.0$ 以上 $6.5$ 未満
震度6弱$5.5$ 以上 $6.0$ 未満
震度5強$5.0$ 以上 $5.5$ 未満
震度5弱$4.5$ 以上 $5.0$ 未満
震度4$3.5$ 以上 $4.5$ 未満
震度3$2.5$ 以上 $3.5$ 未満
震度2$1.5$ 以上 $2.5$ 未満
震度1$0.5$ 以上 $1.5$ 未満
震度0$0.5$ 未満

震度5・6の「弱」と「強」が分かれた理由

1996年の震度階級改定では、震度5と震度6にそれぞれ「弱」と「強」が設けられ、合計10段階となりました [6]。

これは、従来の震度5や震度6の範囲内で、被害の程度に大きな差が生じることが判明したためです。

例えば、計測震度が4.5(震度5弱の最低値)の場合と、4.9(震度5弱の最高値)の場合では、揺れの強さの体感や被害の程度に大きな違いはありません。しかし、計測震度が4.9(震度5弱)と5.0(震度5強の最低値)では、わずか0.1の違いで、体感や被害が急激に増大する傾向があります。

特に、震度5強以上になると、人命に関わる危険性建物の損壊が現実的になるため、防災対応をより細かく分ける必要がありました。この「弱」と「強」の導入により、よりきめ細かく、迅速な防災対応が可能になったのです。


4. 震度階級ごとの現象と被害の目安

震度は単なる数値ではなく、その数値が観測されたときに実際にどのような現象や被害が発生するかを示すものです。気象庁は、それぞれの震度階級で想定される現象を「気象庁震度階級関連解説表」として公表しています [7]。

以下に、特に重要な震度階級における現象の目安を抜粋してご紹介します。

震度階級人の体感・行動屋内の状況屋外の状況・被害
震度4ほとんどの人が驚く。眠っている人のほとんどが目を覚ます。吊り下げたものが大きく揺れる。座りの悪い置物が倒れることがある。蛍光灯などの揺れが目立つ。電線が大きく揺れる。
震度5弱大半の人が恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる。棚にある食器類や本が落ちることがある。固定していない家具が移動することがある。窓ガラスが割れる、補強されていないブロック塀が崩れるなど、被害が生じ始める。
震度5強行動に支障をきたし、何かにつかまらないと歩くことが難しい固定していない家具の多くが倒れる。重い家具でも移動することがある。補強されたブロック塀も崩れることがある。耐震性の低い木造住宅では壁などにひび割れが生じる
震度6弱立っていることが困難になる。這わないと動けないほとんどの家具が移動したり倒れたりする。開かなくなるドアや窓がある。耐震性の低い木造住宅では倒壊するものがある。山崩れやがけ崩れが発生しやすくなる。
震度6強立っていることができず、身動きが取れない飛散する危険性の高いものが多くなる。耐震性の低い木造住宅は倒壊するものが多くなる。鉄筋コンクリート造の建物でも、壁や柱が破壊されるものがある。
震度7揺れに翻弄され、自分の意思で行動できない。家具はすべて倒れ、飛び散る耐震性の高い建物でも、まれに傾いたり、大きく破壊されたりするものがある

5. 震度を知る、未来の防災へ

私たちが普段何気なく耳にする「震度」という情報。その裏側には、人間の体感を科学的に再現しようとする高度な技術と、客観的で迅速な情報提供を目指した歴史的な変遷がありました。

震度計が測定した加速度から、人間の感覚に合わせたフィルタリングを経て「計測震度」が算出され、それが最終的に10段階の「気象庁震度階級」に変換される。この一連の流れが、わずか数秒のうちに全国4,000か所以上の観測点で自動的に行われているのです。

画像で見る、揺れを捉える技術

ここで、私たちが揺れを正確に捉えるために使われている技術をイメージしてみましょう。

地震の揺れと計測技術を組み合わせた、ドラマチックでスタイリッシュな画像。地震波の伝播と、揺れを記録する計測震度計が描かれている。

この画像のように、地球のダイナミックな活動(地震波)を、精密な計測機器(震度計)が捉え、数値化することで、私たちは初めてその脅威を客観的に理解し、適切な行動をとることができます。

震度情報の進化がもたらすもの

震度情報が客観的かつ即時的になったことで、私たちは以下の大きなメリットを得ています。

  1. 緊急地震速報の実現:P波(初期微動)を捉えて、主要動(S波)が到達する前に震度を予測し、警報を出すことが可能になりました。
  2. 被害想定の精度向上:震度と被害の関係が明確になったことで、地震発生直後の被害状況をより正確に推定できるようになりました。
  3. 防災意識の向上:客観的な数値に基づいた情報により、地域ごとのリスクを正確に把握し、個人の防災対策を具体的に進めることができます。

「震度」は、単なるニュースの数字ではありません。それは、私たちが地震という自然の脅威と向き合い、命を守るための科学的な羅針盤なのです。

この知識を胸に、今日からあなたも「震度」の情報をより深く理解し、未来の防災に役立てていきましょう。


参考文献

[1]: マグニチュードと震度の違いは? – 国土交通省 四国地方整備局
[2]: 震度について – 気象庁
[3]: 気象庁震度階級の解説 – 気象庁
[4]: 計測震度の算出方法 – 気象庁
[5]: 計測震度の即時概算方法の開発と利用|企業連携事例 – 防災科学技術研究所
[6]: 震度階級解説表 – 学ぼう!ホームズ君
[7]: 気象庁震度階級関連解説表 – 気象庁

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